再び
バイトを終えた深夜。
コンビニの弁当を片手に家に戻って、点けたテレビ。
体格の良い、相手チームのディフェンダーをあっさりと抜き去り、小さいながらも、ボールを自由に操っている男が写っていた。身体バランスの良さと、抜群のスピードであっと言う間に5人を抜いてゴールへと走る。
なんだなんだこいつは?
サッカーという概念そのものがゆらぐようなそのプレーに魅了されて僕はテレビに釘付けになった。
テレビでアナが言った名前 ディエゴ・マラドーナ。
今までサッカーの試合なんて見たことのない僕は、翌日の新聞でその大会がワールドカップだと知ったのだった。
サッカー史上に残る有名な「五人抜きドリブル」の瞬間をリアルタイムで見れた幸運。
そして本物のサッカー。
それは1986年メキシコワールドカップ大会、まだJリーグができる前のお話。
また始まっちゃうのだ、寝不足の日々。